中小企業経営強化税制とは?2026年(令和8年度)税制改正のポイントと申請手順を解説

中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき対象設備を導入した際、設備取得額の全額を即時償却できる、または取得価額の7〜10%の税額控除(資本金3,000万円以下は10%、3,000万円超1億円以下は7%)を選択適用できる制度です。

本制度は令和7年度改正で見直され、適用期限が2027年(令和9年)3月31日まで延長されています(デジタル化設備=C類型は2025年3月末で廃止済み、暗号資産マイニング業用設備は対象外)。さらに令和8年度(2026年度)改正では、工具・器具備品の取得価額要件の引上げなどの見直しが行われる予定です。本記事では、制度の概要、令和8年度改正のポイント、優遇内容、申請手順までを解説します。

※本記事は令和7年度・令和8年度税制改正および中小企業庁の公表資料に基づく一般的な情報です。要件・金額基準・適用期限の細部は改正で変わることがあるため、実際の適用は中小企業庁の最新の手引きと顧問税理士にご確認ください。

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目次

中小企業経営強化税制とは

経営力向上計画の認定を受け、対象設備の取得等をした場合に、即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できる制度です。次の類型があり、対象設備や適用条件が異なります。

  • A類型(生産性向上設備)
  • B類型(収益力強化設備)
  • C類型(デジタル化設備):2025年3月末で廃止済み
  • D類型(経営資源集約化設備)

(出典)中小企業庁/中小企業経営強化税制

対象企業

青色申告書を提出する中小企業者等(農業協同組合等・商店街振興組合を含む)で、経営力向上計画の認定を受けた特定事業者等に該当するもの。

対象事業

製造業・建設業・小売業・卸売業・サービス業などが対象。電気業・熱供給業・水道業・娯楽業(映画業を除く)・鉄道業・航空運輸業・銀行業などは対象外です。

令和8年度(2026年度)改正のポイント

① 工具・器具備品の取得価額要件の引上げ

令和8年度改正により、対象設備のうち工具・器具備品の取得価額要件が、30万円以上から40万円以上へ引き上げられる見直しが行われる予定です(最新の適用開始時期・詳細は中小企業庁の手引きでご確認ください)。

② 関連する新制度「特定生産性向上設備等投資促進税制」の創設

令和8年度改正では、大規模な設備投資を対象とした新制度「特定生産性向上設備等投資促進税制」が創設されました(詳細は本記事の後半で解説)。これにより、これまで経営強化税制の対象外だった大企業や、建物・構築物を含む大型投資も、一定要件のもとで即時償却・税額控除の対象にできるようになりました。

各類型の適用条件(令和7年度改正反映後)

それぞれの類型の適用条件、対象設備、期限について解説します。

A類型:生産性向上設備

適用要件生産効率等の指標(単位時間当たり生産量・歩留まり率・投入コスト削減率のいずれか)が、旧モデル比で年平均1%以上向上する設備が対象です。
対象設備の例機械装置(160万円以上)、測定・検査工具(30万円以上〔令和8年度改正で40万円以上へ引上げ予定〕)、器具備品(同)、建物附属設備(60万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)。
期限2027年3月31日

B類型:収益力強化設備

適用要件①年平均の投資利益率が7%以上の経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備
対象設備*1~*5・機械装置 (160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上/14年以内)
・ソフトウエア(70万円以上)
期限2027年3月31日

なお、B類型については、中小企業の成長を後押しし、中堅企業への成長ポテンシャルが高い売上高が100億円を超える中小企業(100億企業)の創出を推進するため、100億企業を目指す中小企業に対する措置を拡充されます。

B類型(100億企業を目指す中小企業向けの拡充措置)

適用要件売上高100億円超を目指す中小企業向けに、建物およびその附属設備(一の建物等の取得価額合計1,000万円以上)が対象に加わります。
対象設備*1~*5・機械装置 (160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物及びその附属設備 一の建物及びその附属設備の取得価額の 合計額が 1,000 万円以上のもの
・ソフトウエア(70万円以上)
税制措置【建物及び附属設備】
・特別償却給与増加割合2.5%以上:15%、給与増加割合5%以上:25%
又は
・税額控除給与増加割合2.5%以上:1%、給与増加割合5%以上:2%
ただし、給与増加割合※1が2.5%未満である場合、特別償却及び税額控除は適用できない。

※1 給与増加割合
その事業年度における雇用者給与等 支給額からその事業年度の前事業年度における雇用者給与等支給額を 控除した金額のその事業年度の前事業年度における雇用者給与等支給額※2に対する割合

※2 雇用者給与等支給額
法人の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内の事業所に勤務する雇用者に対する給与等の支給額
期限2027年3月31日

C類型:デジタル化設備(※令和7年4月1日をもって、本類型は廃止

適用要件下の表の対象設備のうち、以下の要件を満たすもの 
事業プロセスの①遠隔操作、②可視化、③自動制御化のいずれかを可能にする設備として、経済 産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備
対象設備*1~*5・機械装置 (160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上)
・ソフトウエア(70万円以上)
期限2025(令和7)年3月31日
※2024年12月の税制改正で延長なし

D類型:経営資源集約化設備

適用要件下の表の対象設備のうち、以下の要件を満たすもの 
・経営力向上計画に事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものであって、経営力向上計画に従って事業承継等を行った後に取得又は製作若しくは建設をするもの

・計画終了年次の修正ROA又は有形固定資産回転率が以下表の要件を満たすことが見込まれるも のであることにつき、経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けた投資計画に記載された投資 の目的を達成するために必要不可欠な設備

修正ROAと有形固定資産回転率
*ROA…総資産利益
*有形固定資産回転率…売上高と有形固定資産の比率を言い、企業の所有す る有形固定資産がどれだけ有効活用されているかを計る尺度
対象設備*1~*5・機械装置 (160万円以上)
・工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上)
・ソフトウエア(70万円以上)
期限2027(令和9)年3月31日

※1 1台又は1基の取得価額の最低金額/販売開始時期

※2 発電用の機械装置、建物附属設備については、発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等を除きます。また、発電設備等について税制措置を適用する場合は、経営力向上計画の認定申請時に報告書を提出する必要があります。

※3 医療保健業を行う事業者が取得又は製作をする器具備品(医療機器に限る)、建物附属設備を除きます。

※4 ソフトウェアについては、複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除きます。

※5 コインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託する ものを除きます。

どんな優遇を受けることができる?

中小企業経営強化税制では、対象設備を導入した際に以下の2つの税制優遇から1つを選択できます。

即時償却

即時償却とは、設備を取得した年度に全額を経費計上できる制度です。通常、設備投資は耐用年数に応じて分割して減価償却を行いますが、即時償却を利用すると、その年の課税所得を大幅に圧縮できます。

(例) 設備取得価額:1,000万円の場合

   取得した年度に1,000万円を全額償却可能

税額控除

税額控除とは、設備取得額の一定割合を法人税額から直接差し引くことができる制度です。中小企業経営強化税制では、対象設備の取得価額の7%(資本金3,000万円以下の法人、個人事業主は10%)の税額控除を受けることができます。

(例) 設備取得価額:1,000万円の場合

 ・資本金3,000万円超の法人

  1,000万円×7%= 70万円の税額控除

 ・資本金3,000万円以下の法人/個人事業主

  1,000万円×10%= 100万円の税額控除

(出典)国税庁/中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

即時償却と税額控除のメリット・デメリットは?

       メリット      デメリット



即時償却
①設備投資した年の利益を抑えることができ、法人税の負担を軽減できる。

②キャッシュフローの改善につながる。

③長期的な減価償却費の管理が不要になる。
①利益が少ない場合、税負担の軽減効果が十分に得られない。

②翌年度以降の減価償却費がなくなり、節税メリットが限定的になる。



税額控除
①直接税額を軽減できるため、法人税の負担が減る。

②即時償却を選択しないため、翌年度以降も減価償却費を計上できる。

③設備投資による節税効果を長期的に享受できる。
①法人税額がそもそも少ない場合、控除の恩恵が十分に受けられない。

②控除額には上限があり、一定額以上の税額控除は繰越しが必要になる可能性がある。

即時償却と税額控除のシミュレーション

耐用年数5年、500万円の機械を取得した場合の即時償却と税額控除をシミュレーションしてみましょう。

即時償却と税額控除どちらを選ぶべき?

即時償却と税額控除のどちらを選ぶべきかは、企業の財務状況や今後の利益予測によります。

■即時償却を選ぶべきケース

・その年の利益が多く、法人税負担を大幅に減らしたい。

・設備投資によるキャッシュフローの影響を抑えたい。

■税額控除を選ぶべきケース

・今後も安定した利益が見込めるため、節税効果を長期的に分散したい。

・即時償却による利益圧縮の必要がない、または税額控除の方が有利な場合。

どちらを選択するかは、企業の利益予測や資金繰りを総合的に考慮して決定する必要があります。適用条件や制度の詳細は毎年変更される可能性があるため、導入前に税理士などの専門家と相談することをおすすめします。

併せて知っておきたい「特定生産性向上設備等投資促進税制」(令和8年度新設)

大規模な国内設備投資を対象に、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に基づき、即時償却または税額控除を選択できる新制度です。

  • 対象企業:青色申告法人(業種制限なし)。国内で自ら事業の用に供することが要件で、貸付け目的の設備は対象外。
  • 投資額要件:中小企業者等は5億円以上、それ以外は35億円以上。
  • 投資利益率(ROI):年平均15%以上の投資計画であること。
  • 対象設備:機械装置・工具・器具備品・建物・建物附属設備・構築物・ソフトウェア(それぞれ取得価額の下限あり)。
  • 税制措置:即時償却、または税額控除7%(建物・構築物は4%)。控除上限は法人税額の20%、超過額は3年繰越。
  • 手続き:設備取得の「前」に投資計画の確認を受ける必要があり、事後申請は不可。他の税額控除・特別償却との重複適用はできません。
  • 適用時期:産業競争力強化法改正法の施行日から令和11年3月31日までに確認を受け、確認日から5年以内に取得・事業供用。

大企業や建物を含む大型投資を検討する場合の選択肢となりますが、要件が厳格で事前手続きが必須のため、早めの検討が重要です。

中小企業経営強化税制の申請方法やスケジュールは?

各類型の申請方法について解説します。

なお、各類型の申請の際に必要な証明書は申請してから発行されるまで数日~2ヶ月程度かかるため、余裕をもった申請が必要です。

A類型:生産性向上設備

B類型:収益力強化設備

D類型:経営資源集約化設備

(出典)中小企業庁/中小企業経営強化税制

まとめ|即時償却または最大10%税額控除で設備投資を支援

中小企業経営強化税制は、対象設備の即時償却または7〜10%の税額控除を選択できる制度で、適用期限は2027年3月31日まで延長されています。令和8年度改正では工具・器具備品の取得価額要件の引上げなどの見直しがあり、あわせて大型投資向けの「特定生産性向上設備等投資促進税制」も新設されました。どの制度・どの選択が有利かは企業の財務状況や利益予測により異なり、要件も細かいため、導入前に税理士など専門家に相談することをおすすめします。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務に関する個別具体的な助言ではありません。税制は改正により細部が変わることがあります。実行にあたっては顧問税理士等の専門家に最新の内容をご確認ください。
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