経営者の皆様、毎月の社会保険料の負担に頭を悩ませていませんか。役員報酬と役員賞与のバランスを設計することで、年間の社会保険料を軽減できる可能性があります。
その理由は、社会保険料の計算基礎となる標準賞与額に上限(健康保険は年間累計573万円、厚生年金は1か月あたり150万円)が設定されているためです。月例の役員報酬を減らし役員賞与の割合を増やすと、賞与部分は上限を超えた分に保険料がかからないため、全体の負担を抑えられる場合があります。
ただし、役員賞与は原則として損金不算入で、事前確定届出給与などの要件を満たさないと税務リスクがあります。加えて、後述のとおり、この手法は現在、制度見直しの議論が進んでおり、将来にわたって効果が続くとは限りません。
重要:制度見直しの動きにご注意ください
月額報酬を極端に低くし、賞与に寄せて社会保険料を抑える手法については、2024年11月以降、厚生労働省の社会保障審議会で「標準賞与額の上限の見直し(引き上げ)」が議論されており、こうしたスキームを封じる方向で検討が進んでいます。今後の制度改正により、本記事で解説する手法の効果が縮小・無効化される可能性があります。実行の可否は、最新の制度動向を踏まえて専門家にご確認ください。
戦略財務総研では、貴社の利益状況と課題に応じた最適な節税戦略を無料でご提案しています。
税理士・社会保険労務士等の専門家と連携し、現行の制度に沿った対策のみをご紹介
透明性の高い情報開示
継続的なフォローアップ体制
戦略財務総研では、貴社の利益状況と課題に応じた対策を無料でご提案しています。法人に加え、経営者個人の対策もご支援しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

役員賞与の基礎知識
役員賞与とは、取締役や監査役などの会社役員に対して、通常の月例報酬とは別に支給される臨時的・特別的な報酬のことです。業績への貢献に対する評価や、特定時期(夏季・冬季など)に支給されることが一般的です。
役員賞与の税務上の基本的な取り扱いは、法人税法上「原則として損金不算入」とされています。これは一般従業員の賞与が原則損金算入できるのとは大きく異なる点です。ただし、下記の要件を満たせば例外的に損金算入が認められます。
・事前確定届出給与:支給時期や金額を事前に確定させ税務署に届け出る方法
・利益連動給与:客観的な指標に基づいて計算される方法(主に上場企業向け)
・定期同額給与の改定:年度途中での役員報酬の増額分(実質的な賞与扱い)
役員報酬との違い
| 役員賞与 | 役員報酬 | |
| 原則として損金不算入。 ※特定の要件を満たす場合のみ損金算入可能 | 税務上の取り扱い | 会社法上の「報酬等」として定款または株主総会の決議に基づき支給 |
| 臨時的・特別的に支給 | 支給の性質と頻度 | 定期的(通常は毎月)に一定額を支給 |
| 会社法上も「報酬等」に含まれるが、利益処分としての性格が強い | 支給形態 | 会社法上の「報酬等」として定款または株主総会の決議に基づき支給 |
社会保険料における取り扱い
役員賞与に対しては、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が課されます。標準賞与額に対して約15%の社会保険料が課されることが定められています。
標準賞与額の上限が、健康保険料の場合は年間累計額573万円、厚生年金保険の場合は1カ月あたり150万円の上限額が設定されています。
健康保険料と厚生年金保険料の上限について
| 毎月の役員報酬 (定額同額給与) | 役員賞与 (事前確定届出給与) | |
| 健康保険料 | 保険料:9.91% 報酬上限:年1,688万円 | 保険料:9.91% 報酬上限:年573万円 |
| 厚生年金保険料 | 保険料:約18.3% 報酬上限:年788万円 | 保険料:約18.3% 報酬上限:年150万円 |
※2025年3月分からの東京都における保険料額表を適用
役員賞与で社会保険料を軽減できる理由
年間に会社が支払う総額が同じでも、役員報酬と役員賞与の割合を調整することで、社会保険料を軽減できる可能性があります。役員賞与には上限額が設定されているため、賞与を増やし月例報酬を減らすと、上限を超えた部分には保険料がかからず、負担を抑えられる仕組みです。ただし、前述の制度見直しの動きにより、この効果は将来的に縮小する可能性があります。
役員賞与と役員報酬の割合別シミュレーション

(出典)全国健康保険協会 令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
社会保険料を軽減する際の注意点
①不当に役員賞与を高くすると損金算入ができない
役員賞与は原則として法人税法上の損金(経費)に算入できません。例外的に損金算入が認められるのは、事前確定届出給与や利益連動給与などの厳格な要件を満たした場合のみです。
月例の役員報酬を極端に低く抑え、賞与の比率を不自然に高くすると、税務調査の際に「役員報酬の恣意的な操作」と見なされるリスクがあります。この場合、賞与部分が損金不算入となり、法人税の追徴課税を受ける可能性があります。
②退職金の損金算入額が少なくなる
役員退職金の損金算入限度額は、「最終月額報酬×役員在任年数×功績倍率」で計算されることが多いです。功績倍率とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法です。
月額報酬を低く抑えて賞与で調整すると、この計算式の基礎となる「最終月額報酬」が低くなるため、将来の役員退職金の損金算入限度額が減少します。
結果として、退職金支給時に損金算入できる金額が制限され、法人税負担が増加する可能性があります。
(出典)国税庁 退職給与
③役員の将来の年金受給額に影響が出る可能性がある
標準報酬月額を低く抑えると社会保険料の負担は減りますが、同時に将来受け取る年金額も減少します。特に厚生年金の受給額は標準報酬月額の履歴に基づいて計算されるため、長期的な視点では必ずしも有利とは言えない場合があります。
役員の年齢や将来設計によっては、短期的な社会保険料の削減よりも、将来の年金受給額を優先すべきケースもあります。
④キャッシュフローを圧迫する可能性がある
月例報酬を抑えて賞与で調整する方法は、大きな金額を一度に支払う必要があるため、会社のキャッシュフローに影響を与える可能性があります。特に資金繰りが厳しい中小企業では、毎月の給与支払いに比べて、まとまった賞与の支払いが資金計画に影響することがあります。
また、賞与支給時には所得税の源泉徴収や社会保険料の納付も一時的に発生するため、資金需要が集中することも考慮する必要があります。
社会保険料の削減を目指す際は、これらの注意点を総合的に検討し、会社の状況や役員の年齢・状況に応じた最適なバランスを見つけることが重要です。短期的な負担軽減だけでなく、中長期的な視点での最適化を目指すべきでしょう。
社内規程の作成・運用の手順
役員賞与を活用した社会保険料削減を適切に行うためには、以下の手順に沿って社内規定を整備し運用することが重要です。
①賞与支給の方針・スケジュールを決める
まずは基本方針を社内で決めます。
・支給する月/回数(例:年2回、6月と12月)
・支給金額の算出方法(定額/売上連動など)
・支給対象者(代表取締役のみ、他役員含む 等)
・賞与と報酬のバランス(社会保険料への影響を加味)
なお、支給額は“利益の状況を見て後から決める”では損金にできません。事前に明確に決めておく必要があります。
②社内規定に明文化する
定款や賞与規定、株主総会議事録のいずれかに月例報酬と賞与の支給方針・金額・時期を明確に記載します。
③株主総会または取締役会で決議を行う
賞与の支給に関する議案を上程し、決議内容を議事録に残します。代表取締役が1人の場合でも、形式的にでも決議書(同意書)を作成しておきましょう。
④税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出
株主総会で決議してから1ヶ月以内に、税務署へ下記の書類を提出します。
・事前確定届出給与に関する届出書
・株主総会議事録・取締役会議事録の写し
・役員報酬規程の写し
⑤支給を「届出通り」に行う
届出した金額・時期通りに支給することが必要です。変更・遅延・一部未支給などがあると、全額が損金不算入となる可能性があります。
適切な役員賞与を設定するために
役員賞与と役員報酬の適切なバランス設計
賞与を多くしすぎると税務リスクが高まり、逆に報酬が高すぎると社会保険料負担が重くなります。過去3年間の業績推移と今後の見通しやキャッシュフローの状況、役員の個人的状況なども考慮した上で適切なバランスを設計しましょう。
専門家のサポートを利用する
賞与を多くしすぎると税務リスクが高まり、報酬が高すぎると社会保険料負担が重くなります。過去の業績推移や今後の見通し、キャッシュフロー、役員の個人的状況、そして制度改正の動向を踏まえてバランスを設計しましょう。役員賞与の設計には税務・労務・社会保険の複合的な知識が必要なため、顧問税理士・社会保険労務士と連携して進めることが不可欠です。
当社では、社会保険料の最適化に関するご相談を承っています。役員賞与と役員報酬のバランス設計について、専門家と連携しながらアドバイスします。
税理士・社会保険労務士等の専門家と連携し、現行の制度に沿った対策のみをご紹介
透明性の高い情報開示
継続的なフォローアップ体制

戦略財務総研では、貴社の利益状況と課題に応じた対策を無料でご提案しています。法人に加え、経営者個人の対策もご支援しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
\節税のプロに相談/
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・労務・社会保険に関する個別具体的な助言ではありません。制度は改正が予定・議論されており、適用可否・効果は時期や個別の状況により異なります。実行にあたっては顧問税理士・社会保険労務士等の専門家に、最新の制度内容をご確認のうえご検討ください。

